ICDとは
CRT・CRT-Dとは

沖重 薫

横浜市立みなと赤十字病院
心臓病センター長
<専門>
臨床不整脈、心臓性突然死、
特発性心筋症、
カテーテル・アブレーション手術

横浜市立みなと赤十字病院

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神奈川県横浜市中区新山下3丁目12番1号
TEL:045-628-6100(代表)
FAX:045-628-6101


 心室細動は一刻も早く治療しなければなりません。心室細動が起きてから治療開始まであまり時間がかかると、せっかく電気治療を行っても成績が芳しくないことがあります。ですが、心室細動はいつ起こるのか予測は不可能です。医療サイドとしても、心室細動を起こす危険性のある人の傍に、常にAEDや電気ショック装置をスタンバイしておくわけにはいきません。

 こうした問題点をクリアするために、「AEDを体内に植え込む」という発想が、1980年に米国のミロウスキーという専門医から生まれました。これがICD(Implantable Cardioverter Defibrillator:植込み型除細動器)です。

 ICDは大きく2つの機能から構成されます。ひとつは、重篤な不整脈が起こった場合それを正確に素早く診断する機構。もうひとつは、その不整脈を可及的速やかに治療する機構です。外見は、従来のペースメーカと酷似しております。ペースメーカと同じように、心臓にはリードと呼ばれる直径数mmの電線コードのようなものを挿入・留置し、ICD本体に接続します。リードの先端部分にはセンサーが装着されており、重篤な不整脈が起こるやいなや、ICD本体のコンピューターは、あらかじめ医師がインプットしたプログラムにしたがって自動で不整脈を診断し、電気ショックを流して緊急救命治療を行います。

 本来、左右両方の心室は、ほぼ同時に動かなければなりません。左右の心室の“ずれ”が生じると、心臓機能に悪影響が出て心不全を起こす原因となります。また拡張型心筋症の半分以上の例では、左心室の収縮形態が“いびつ”になり、左心室の全部位が同時に同じ勢いで収縮しなければならないところ一部が遅れて収縮することで、心臓のポンプ機能が損なわれます。こうした“ずれ”や“いびつ”な収縮形態を矯正して、心臓の収縮機能の効率を高めようと開発されたのが両室ペーシング治療法CRT:Cardiac Resynchronization Therapy)です。

 従来のペースメーカー治療法においては、リードを植え込むのは右心房と右心室だけでしたが、両室ペーシング法では、右心房と左心室の境界を走っている「冠静脈洞」の中にもう1本リードを挿入します。そこから左心室を電気刺激して、強制的に動かすことで、左心室の収縮形態を矯正します。

 両室ペーシング治療は心不全全患者に対して、心機能を改善し、再発回数を減らしたり、再発による入院加療日数を改善したりする効果は認められたのですが、突然死を回避する効果はないことが指摘されました。むしろ、両室ペーシングは重篤な不整脈を惹起するのではないかとする報告も出てきました。

 そこで新たに、両室ペーシング機能にICD機能を組み込んだCRT-Dという“ハイブリット”機器が考案されました。心室収縮形態を改善して心不全治療を行いながら、心臓性突然死に対しては、致死性不整脈が起こるや否や、即座にICD機能で治療します。この治療法は、重篤の拡張型心筋症患者への福音として、今や世界中で行われています。


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突然死の話
あなたの心臓に潜む危機
(中公新書)
沖重 薫著


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